大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2967号 判決

(一) ≪証拠≫によれば、控訴人はニツキに対し、掘さく機、ブルドーザー等建設機械売却代金二、四〇〇万円の債権を有し、昭和五二年九月五日東京法務局所属公証人矢実武男作成の公正証書に基づき、ニツキとの間において、右売却代金二、四〇〇万円につき、同年九月三〇日から昭和五五年八月三一日まで、毎月末日限り、五〇万円宛の割賦弁済を受ける旨約していたところ、ニツキは右割賦弁済を怠ったため、控訴人は、昭和五二年一二月一八日頃、本件建物内に存するニツキの動産を差押えたこと、しかるにニツキは、昭和五三年二月一九日頃、控訴人ほか多数の債権者に対する多額の負債を擁して倒産し(この倒産の事実は、当事者間に争いがない)、社長その他の全従業員も行方をくらまし、控訴人から買受けた前記掘さく機、ブルドーザーの所在も分らず、残された唯一の資産は本件建物のみであったこと、そこで、控訴人は、ニツキを債務者として、足立簡易裁判所から本件建物についての仮差押決定を得たが、当時右建物は未登記であったため、同年三月一一日、右裁判所の嘱託によって保存登記がなされたうえで、同日右仮差押の登記がなされるに至ったこと、そして控訴人は、引続いて同年五月一五日東京地方裁判所に対し、本件建物についての強制執行を申立て、翌一六日競売手続開始決定を受け、同月一七日その旨の登記がなされるに至った(右仮差押登記及び競売手続開始決定の事実は、当事者間に争いがない)ことが認められる。

(二) しかしながら、≪証拠≫によれば、被控訴人は、昭和五一年一二月二三日、ニツキに対して本件土地を、駐車場としてのみ使用し、残土、がれき等の捨場、置場として使用することを禁止し、期間を昭和五二年一月一日から同年一二月三一日まで、賃料は毎月一七万三、〇〇〇円として毎月末日限り翌月分前払い、右期間満了前においても、当事者の一方から三か月前の予告により解約することができ、なお借地法等の適用がないものとして、賃貸したところ、ニツキは本件土地上に常時大量の土砂を堆積し、賃料の支払も滞りがちになる等契約違反の事実があったとして(右違反事実の真否はさて措き)、昭和五二年六月一日到達の書面をもって、ニツキに対し、三か月の予告期間満了日に解約する旨の意思表示をなした旨主張して、右三か月の期間満了を待って後、本件建物収去、本件土地明渡の訴を提起したこと、被控訴人としては右契約締結の際、ニツキに対し、仮設建物の限度で駐車場に必要な施設の構築を認め、賃貸後ニツキが存置するに至った本件建物もそのうち、(二)の建物はプレハブ造りの物置であり、(三)の建物はプレハブ造りの事務所であったところから、いずれも右約旨に従った仮設建物に過ぎないものと信じていたので、右訴状にも、収去を求める建物として右のとおり仮設建物と表示していたのであり、従って本件建物が土地の定着物として登記の対象となりうるとは全く考えていなかったのであって、本件認諾に至るまで、控訴人申立にかかわる仮差押、競売申立登記の事実を知らなかったことが認められる。控訴人は、当審における本人尋問に際し、右認諾に先立って、被控訴代理人弁護士服部邦彦に対して、右仮差押登記の記入された登記簿謄本を見せた旨供述しているが、たやすくは措信し難い。

他方、ニツキから右事件につき訴訟代理の委任を受けていた弁護士森岡秀雄(この事実は当事者間に争いがない)は、前記認定のように、右訴が提起された後数か月を出でずして、ニツキの社長を始め、全従業員が行方をくらますという事態に逢着したのであるから、右事件につきニツキに有利な主張立証をするのに困難を感じていたであろうことは容易に推認されうるところであり、又右事件において、ニツキの側に、被控訴人の請求を妨げるべき有力な主張及び証拠があったのに拘らず、訴訟代理人森岡が敢てこれを放棄して右認諾に及んだと目すべき事実も見当らない。

(三) 以上認定の事実に徴すれば、被控訴人がニツキに対して本件建物収去本件土地の明渡しを求めるのは、当然の権利行使であって、ニツキに対して他に債権者があるの故をもってその権利行使を阻害されるいわれはなく、又ニツキの訴訟代理人が請求認諾に出でたのも、前記契約条項の内容、ニツキの関係者の行動に照らしてまことにやむを得なかったものということができる。

してみれば、請求の認諾が詐害行為取消の対象となりうるとしても、本件認諾は、被控訴人及びニツキのいずれの側においても債権者を害する意思をもってなしたものということができないから、右認諾は詐害行為とはならないと解するのが相当である。なお、控訴人は、右認諾は、被控訴人とニツキの、双方の訴訟代理人間の馴れ合いである旨主張するが、その証拠はない。

畢竟、控訴人の債権者取消権に関する主張もまた、採用できない。

(森 新田 真栄田)

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